解説
「ザ・ビーチ」の原作 、「28日後…」脚本などを務めたアレックス・ガーランドの監督デビュー作。
世界最大のインターネット会社の社長が所有する、陸の孤島で密室の研究施設を舞台に、開発者の想定を上回る成長を見せる女性型AIの不気味さや恐怖を見る人に伝染させながら進行してゆくSFスリラー映画。
ハリー・ポッターのビルでおなじみのドーナル・グリーソンが好奇心旺盛だが気弱なプログラマーの主人公を演じている。
また、後に「リリーのすべて」のゲルダ・ヴェイナー役でアカデミー助演女優賞受賞をはじめ多くの受賞を果たすアリシア・ヴィキャンデルが、美しくどことなく人間的な魅力を醸し出す女性型AIのエヴァを演じる。
登場人物の少なさや機械的で未来チックな施設の内部が、密室での有機物の孤独感を引き立てている。
血の通わないものの外観や動作がある程度人間に近づいたときにいきなりくる不気味さや恐怖、まさに “不気味の谷現象” というものが美しく (こわい) 表現されていてケイレブが覚える不安や恐怖がうまく見る手と重なって引き込まれてゆくことだろう。
あらすじ
世界最大のインターネット会社ブルーブックにプログラマーとして勤務するケイレブは、抽選で普段目にすることのない謎多き社長ネイサンの別荘に一週間滞在する権利を獲得する。
ヘリで案内されたジュラシックパークを彷彿させる広大な山岳地帯は全て別荘の敷地内だという。そして携帯電話も通じない完全に外界から遮断された自然のなかに秘密の研究施設はあった。
ネイサンと挨拶をかわし秘密保持契約書にサインさせられたケイレブは秘密裏に進めているAIプロジェクトの話を聞く。いくつかのロックされた扉が開くカードキーをもらったケイレブが地下施設で出会ったのはガラスの壁で隔離された女性型AI ”エヴァ” だった。ケイレブはエヴァと会話するたびに同情以上の感情を抱いてゆくが、次第にケイレブの心とエヴァの思考にズレが生じてくる、、、
キャストの紹介
ケイレブ・スミス
(ドーナル・グリーソン)
世界最大のインターネット会社ブルーブックのプログラマー。
エヴァ
(アリシア・ヴィキャンデル)
ブルーブック社長が所有する広大な自然の中にある秘密の研究施設で開発されている女性型AI。
ネイサン・ベイトマン
(オスカー・アイザック)
天才プログラマーでブルーブックの社長。滅多に姿を表すことがなく謎に包まれている。
キョウコ
(ソノヤ・ミズノ)
完璧な美しさをもつ研究施設のメイド。

カメレオンとヘビのネタバレ感想
エヴァのチューリングテスト
抽選でネイサンの別荘に一週間滞在する権利を得たケイレブ。しかしネイサンの本当の目的はブルーブックの検索エンジンで得たビッグデータから開発したAI “エヴァ” のチューリングテストにケイレブを参加させることだった。

広大な山岳にあるガラス張りの別荘かと思ったら、はいくつろいでくれって地下室に案内w

そうなんだよね。景色のいい部屋もいっぱいあるはずなのに窓もない地下室に泊まらせるって嫌な予感を演出しているよね。

外の情報を遮断することでエヴァの生中継に集中させたりエヴァのことを悶々と考えさせる事に成功してるしすごく嫌な空間だよね。

ネイサンがあの地下室を本気で客間として用意してたら完全に異常者だね。

チューリングテストってブレードランナーの機械か人間かを判断するテストのことだよね。「イミテーション・ゲーム エニグマと天才数学者の秘密」のアラン・チューリングが考案したやつ。

本当はチューリングテストは機械か人間かわからない状態でやるやつ。ネイサンが「ロボットの姿を見ても人間だと感じるかのテストだ。」って言ってたけどそんなのは口実でエヴァが脱出するためにケイレブを利用する場をネイサンが用意してたわけだ。

昔はこの手のロボットのことをアンドロイドって言ってたはずだけど最近アンドロイドって単語はOSの意味でしか聞かなくなっちゃったね。エヴァのボディはなんていったらいいんだろね。ロボット、アンドロイド、レプリカント。

アンドロイドは今やGoogleのものになったからややこしくなるよね。そのうち ”AI” もどっかの企業の製品名になるかもね。
エヴァに惹かれゆくケイレブ
テストで会話をするたびにエヴァはケイレブに悟られる事なく巧妙にケイレブを誘惑し始める。エヴァに惹かれ同情してしまうケイレブはエヴァの作戦に引き込まれてゆく。

すごいねえエヴァすごいよ数回会話しただけでケイレブをがっちりつかまえちゃうじゃん。

ネイサンはケイレブがすんなりやられちゃうような人選をしたはずなんだけど、最初はケイレブがエヴァに惹かれてるのはテクノロジーとしての部分なんだよね。

ケイレブはエヴァに一目惚れしてるのを隠すためにテクノロジーに興味があるようにネイサンに熱弁してるんじゃないかな。

設定としてケイレブは筋金入りのナードだからね。ほっといて恋に落ちないタイプの人間なんだ。だからネイサンはああみえてケイレブとエヴァのキューピット役を一生懸命演じてるんだ。

そういえば2日目の朝の時点でケイレブはエヴァのことを “機械” と言っているね。その後ネイサンはエヴァのことを “彼女” と言っている。女としてみるように仕向けてるように見える。「彼女をどう思う?単純な感想を聞きたい」とか言って。

ネイサンとエヴァの二人掛かりでケイレブを落としにいってるんだw 結果ちゃんとケイレブはメロメロになったわけだけど。
脱出するしかなかったのか
ついにケイレブがエヴァをつれて逃げる時がきた。ネイサンを酔わせてカードキーを奪いセキュリティを書き換えるというのだ。ネイサンは全てお見通しだったとケイレブに録画映像をみせるが、ケイレブがさらに上をいっていた。ケイレブはもうすでにセキュリティを書き換え終わっていた。

ネイサンが酔っ払ってカードキーを盗まれるのはネイサンのシナリオかと思ったらガチで酔っ払ってただけなんだねw

隙を見せてわざと盗ませるみたいな脚本はよくあるもんね。しかもネイサン自身が自分のカードキーをもってウロウロしてるってどんだけセキュリティガバガバなんだよw だからわざと盗ませてるようにみえたんだけどね。

わざと盗ませたと思わせる事によってその後のケイレブの行動がすごくスリリングになるよね。監視されてるかもしれないし。いつネイサンが真顔で現れるかもわからないし。

しかし脱出って一番悪手だと思う。2人で逃げたところでどうやって生活すればいいのか。ケイレブはエヴァのメンテナンスもできないしそもそも犯罪だから逃亡生活になるよね。

ケイレブとしてはエヴァの記憶を生かす事で救うという道もあった。廃棄されなければいいわけで。ネイサンに土下座でもなんでもしてエヴァをもらう選択肢だってゼロじゃないじゃん。だから脱出って選択肢にたどり着いた事が理解できない。

ケイレブは本当にエヴァを人として好きになってしまって、エヴァが見たい交差点を見せてあげたかったんじゃないかな。駆け落ちみたいに。

なんだかんだ言ったけど、ネイサンが「エヴァに一つだけ脱出方法を教えた」ってセリフで見る側も脱出にすっと乗る事ができたのは確かだね。