やあヘビだよ。
今回は2017年アメリカのホラー映画「ゲット・アウト」の感想。
監督はコメディアンでこの作品が映画監督デビューとなったジョーダン・ピール。
アフリカ系アメリカ人の主人公クリス・ワシントン役はダニエル・カルーヤ。
クリスの恋人ローズ・アーミテージ役の女性がどこかで見たことあると思ったら2018年「パーフェクション」でも重要な役を演じたアリソン・ウィリアムズ。
写真家のクリスは恋人ローズの家族に挨拶するためローズの実家アーミテージ家へ滞在することとなる。
ローズの両親は医者で実家は豪邸だった。
白人家族の中に黒人ということで居心地の悪いクリスに追い打ちをかけるようにちょうどアーミテージ家で親睦会なるものが開かれる時期で白人の富豪たちが集まる。
そんななか次第に違和感を覚え始めるクリスだったがすでにクリスは催眠術によって体を制御される暗示をかけられていた。
まずこの映画は主人公と観客が同じぐらい真相を知らないというところが面白い。
あるところまでは観客だけに情報を開示したりしないんだ。
そして黒人差別白人至上主義がテーマのホラー映画ではあるんだけどそれ以上に人種差別反対の人もいじっている感じがした。
「難しい顔すんなよ人種差別反対とかいって助長してんじゃねえよ」
といった意図もあるような気がする。
そんなホラー映画としてそして人種差別やジョークなんかを勝手に考察してみようと思う。
この映画の感想と考察は人種差別についての話がいっぱい出てしまうけど
ヘビもカメレオンも映画についての考察をするもので
人種差別やそれを助長する意図はない事を断っておきます。
黒人の体を盗む秘密結社

アーミテージ家そして親睦会のメンバーは黒人を連れてきては体を乗っ取る秘密結社だった。
ローズの祖父が考案した “凝固法 (COAGULA)” は年老いた秘密結社のメンバーの脳の一部を連れてきた健康な黒人の脳へ移植することで年老いたメンバーは黒人の体を使って生き続ける事ができるという。
乗っ取られた人は完全に死にはしないが体の主導権を奪われ意識は
“沈んだ地” (意識が沈んだ先の場所で遠くの表層に現実が見えている闇の世界)
に落ちている状態になるらしい。
見えて聞こえているが体は動かない。
せめて殺して欲しい、、、
クリスがいよいよアーミテージ家から脱出しようとするがもう遅かった。
親睦会であった黒人ローガン・キングが半年前に失踪したアンドレ (映画の冒頭でローズの弟にさらわれた人物) だったことと
クローゼットの箱の中にあったローズと写った何人もの黒人と雰囲気の違う使用人ジョージナの写真が脱出する決定打になったけど
ローズの母ミッシーがティーカップをスプーンでコチコチコチと鳴らすとクリスは “沈んだ地” へと落ち体は倒れて動かなくなる。
最初の晩にミッシーがカウンセリングをしたときにティーカップの音がトリガーとなって意識が遠のく暗示をかけていたのだった。
観客は全てがわかったときに今までのへんなシーンに意味があった事に気づく。
いくつか具体的にあげてみると、
- ミッシーがカウンセリングでティーカップを持ってスプーンでいつまでもかき混ぜてるシーン
「飲まないんかい!」
と思わず突っ込みたくなったけどティーカップの音がクリスの意識を飛ばすトリガーとなる暗示をかけていた - アーミテージ家に到着したとき使用人の男が右手を挙げてローズたちを迎えるけど使用人があんな迎え方をするかな??と思ってた
でも中身はローズのおじいちゃんなんだから自然だよね
孫娘におかえりーっていうポーズだ - 親睦会でクリスのスマホのフラッシュを浴びたローガン・キング (アンドレ) がクリスにつめより「出て行け」と叫ぶのが「無礼者出ていけ」という意味だと思っていたけど
フラッシュによって体の持ち主であるアンドレの意識が戻って
「お前体を奪われるぞ!今すぐ出ていけ(逃げろ)!」
と言っていた - ジョージナがちょいちょいおかしくなるのは
新しい黒人の体をうまく制御できなくて体の持ち主の意識が出てきて泣いたりしていた
などなどなんか気になったシーンの謎はどんどん解けていって納得できるところが面白い。
ローズが観客にもボロを出さない

まず人種差別については置いておいて、
この映画はクリスの困惑や恐怖を共有して楽しめるぐらい主人公に感情移入できるよううまくできている。
- 子供のころ交通事故にあったお母さんを探しに行かなかった後悔
- 白人だらけの場違いなとこへ黒人が入り込んだ不安
- 味方だと思ってた愛する人がそうでなかったときの落胆
後悔、不安、落胆の経験って誰もがあるものだと思う。
そこをうまくつくようにクリスは暗示をかけられる。
クリスと同じように観客も色々思い出したかもしれない。
また映画の作りが
アーミテージ家の真相をクリスひとりだけが知らない。
落札のシーンが出てくるまでは観客もクリスと同じぐらい真相を知らない。
ってのが観客がクリスになるうまい手法だよね。
そしてローズが観客にもボロを出さない。
ローズの顔がクリスに見えてなくてカメラにしか見えないシーンでもローズは怪しい顔を浮かべることはない。
ありがちなホラーだとここでローズが怪しいと観客に気づかせたくなってローズがニヤリとしたりってパターンが多いよね。
そんな徹底した演出によって、
クリスがクローゼットの写真を見た後もローズを愛しているもんだから真実を認めたくないという思いが観客にも伝染するようにローズが正体を現すまで見守ることになる。
しかし引っ張ったよねえ車の鍵を探すシーン。
あれ?もしかして思い過ごしなんじゃないか?
ローズはやっぱり味方で一緒に逃げるんじゃないかというクリスの願いと同じ気持ちになっちゃうよね。

ホラー的な恐怖の演出はほぼなかった気がしたなあ

そういわれると
うわ!と思ったのは
最初の夜にクリスの後ろをジョージナが通ったときぐらいだった気がする

そうそうあそこだけなんだビックリするの

怖いというか通して不気味な感じだったもんね

そうそうそうなんだよ
お笑いも緊張と緩和の緊張だけをピックアップしたらホラーになるじゃんか

例えば夜中におじいちゃんが全力で走ってくるシーンは怖いけど完全にお笑いになる
この映画の恐怖演出は基本的にあんな感じのお笑いの緊張を多用してるように感じるんだ

コント集の「HITOSI MATUMOTO VISUALBUM」に近い感じ

ああああなるほど!
あれはホラーだw
ジョークなのか皮肉なのか

黒人自虐ジョークなのか
現代では人種問題に過剰に反応する社会になってきたためこういった黒人ジョークで笑う事もどんどん難しくなっていくのかなあ。
この映画ではエディ・マーフィーの再来かと思うほどの過激な黒人自虐ジョークが満載されている。
と思う。
と言うのもヘビは黒人の文化に詳しいわけじゃないけじゃないから全部気づいてないだろうけど誰が見てもあからさまなジョークがいくつかあったよね。
アーミテージ家に到着してクリスに不自然なほどフレンドリーなローズの父ディーンのシカの話。
「私はシカが嫌いだ」
「やつらは生態系を崩している」
「もっとやつら殺して欲しい」
「やつらが路肩で死んでるのを見るとせいせいするよ!」
シカ=Deer
牡鹿=Stug
黒人差別なスラングは色々ありそうだけどこの “Stug” もそんな意味を含んでいるそうな。
そして最初は “Deer” って言ってたお父さんだけど最後 “Stug” って言ってるよねw
すると “シカ” が “黒人” にすり替わるわけだ。
「モンティパイソン」のテレビ番組のコントでおばさんに扮したテリー・ジョーンズが
「黒人は嫌いだよ!」
って言うやつぐらいストレートなギャグなんじゃないだろうか。
自称人種差別反対に対する皮肉か
またこの映画のテーマはシカをはねた後の警官とのやり取りに集約された皮肉なんじゃないかと思う。
ローズがへんにクリスを人種差別から救おうとする態度。
ストーリー上はクリスがこれから行方不明になるからここでクリスと一緒にいた記録を残したくないからクリスに身分証を提示してほしくなかったんだろうけど。
このシーンを深読みしてみると
警官「Sir (クリス) あなたも免許証をみせてください」丁寧にお願いしている
ローズ「なぜ? (黒人だからって怪しいと言うの?)」
クリス「(そんなこと言ってないよ大丈夫だよ) 州の身分証がある」
ローズ「運転していない (なのに黒人だからって失礼だわ)」
警官「(言ってねえよ)」
ローズ「そんなのおかしい何もしてないのよ必要ない (黒人ってだけで何もしてないんだから提示する必要はないわ!)」
クリス「いいよ提示するよ (いやいやスピード違反じゃないんだから同乗者が身分証定時してもおかしくないよ)」
警官「我々には身分の提示を求める権利がありまして (人種差別なんかしてないし決まりなだけだ)」
ローズ「よく言うわ (人種差別の白人至上主義者めが)」
警官「お嬢さん、、、(言ってねえよ)」
警官「わかりました結構です (なんだこいつ)」
ローズ「ご苦労様 (人種差別は許さないわ)」
クリス「、、、(君が、、、)」
こんな感じにみえませんかw
というか深読みも何もこういうシーンだよね。
自称人種差別反対の白人が差別のないとこで騒いで差別をしてることを皮肉ったシーンだ。
すると
秘密結社の上流階級の白人が黒人の体を欲しがるとこも
黒人の体は優れてるよー最高だよグレートだよーっていう事で知能をバカにしてる事になるし
オバマに投票するよとか
うるせーよって事で黒人は爆笑するところじゃないのかw
おじいちゃんは陸上選手で黒人選手に負けた事があるから黒人の強靭な体を手に入れて夜な夜な喜んで庭で走り込み
ってそんなわけあるかって言う皮肉だよねえ。
「時代は黒だよ!」ニヤニヤ
ブラックアメリカンジョークは監督がアフリカン・アメリカンだということで成立してるのかもしれないけど今は人種差別問題に過剰に反応する現代という事もあり
黒人じゃない人種からみるとちょっと笑っていいものかと危険を感じるところもあるんだよねえ。

しかしなんでも差別だと反応するのもどうかと思いますよはい

まあねえ

ちょっと前に大晦日のガキの使いで
浜ちゃんがエディ・マーフィーに扮したやつで色々あったじゃん

なんか日本在住の黒人の作家が苦言を呈する事態になったとか

そうそう作家のバイエ・マクニールさん
でもあれもちょっと誤解があると思うんですよ

ほうほう

あれは黒人をバカにしてるわけじゃなくて
浜ちゃんがエディ・マーフィーになってるからおかしいだけで
方正がツタンカーメンの恰好しておかしいのと同じ感じの笑いじゃないか

これ鯨みたいに日本の食文化にケチつけられてるのと違って
わざわざ他人種の黒人で笑いとってるわけだから
黒人が不快感出してる時点でアウトですな

でもさ浜ちゃんぐらいのおっさんたちが
どれだけエディ・マーフィーの事が大好きか
というとこですよ

顔を黒く塗って黒人を演じるってこと自体がアウトらしいので
そこにどんなリスペクトがあってもダメなんだと思う

ぐうの音もでないっす

マクニールさんの言う事が黒人の総意なのかなあ
残念です

総意だったらダウンタウン死んでるだろw

好意的に受け取れば日本在住の黒人が声を上げてくれたおかげで
軽症のうちに済んだくらいに思っておけばいいんじゃない

なるほど逆に助けられたと
マクニールさんは日本が好きって言ってくれてるし

そうそう
あくまでも個人の感想です。みんなはどう感じたかな?