やあヘビだよ。今回はNetflixオリジナルの2020年サスペンスなスペイン映画「その住人たちは」の感想。
広告代理店重役で業界で有名なデザイナーでもあった男は失業して高級住宅を手放して妻と息子と郊外の安アパートへの引っ越しを余儀なくされた。
かつての栄光もありプライドが邪魔をしてなかなか再就職ができないでいるなか元の高級住宅を見に行くと幸せそうな家族が入居していた。
男は自分にふさわしいくらしを取り戻すために選択したのは他の家族を奪うという方法だった。
この映画はジャンルでいうとサスペンスになるんだろうけどサスペンス的にはあまりひねりがないストーリーで胸糞が悪いとあまり評価されてないようなんだ。
しかしヘビは勝手に断言します。
この映画は傑作でおすすめです。
主人公の男ハビエルが自分にふさわしいホーム (このホームはハウスじゃなくてホームです。) を取り戻すために信じられない行動をとるんだけどこのハビエルはあまりにも暗く女々しく淡々と事を順調に運んでいく。
そしてその心境を説明する演出がとくになく観ている人が勝手に解釈しながら淡々と進んでいく様はまさに純文学。
そうなんです純文学モードで観ていると主人公の変態っぷりも純文学。とんでもないことが次々と成功していく様も純文学。すると不思議、箇所箇所にちりばめられたちょっとしたシーンも純文学になってきて上手くいきすぎる展開すらも当たり前のように受け入れて主人公の想いを想い、映画を観終わって反芻するうちにどんどん名作になってしまう。
スペイン映画なのに日本の純文学に通じるものがある不思議な映画なんです。
是非みんなも純文学受け入れ態勢で観てハビエルのホームを取り戻そうとする想いを反芻してほしい。
あなたにふさわしい暮らしを

明るい家。帰宅する父親に駆け寄る子供。
子供を抱き上げる父親。
妻とキスを交わす父親。
明るい食卓。
“あなたにふさわしい暮らしを”
ハビエルが昔手掛けたCMが流れる。
ハビエルは高級車に乗り妻と息子と高級住宅に住んでいる成功者だったけど今は失業していた。元は広告代理店重役で業界では過去に手掛けたCMが有名な広告デザイナーでもあった。 しかしプライドが邪魔をしてなかなか再就職できないまま一年近く経とうとしていた。
ついに妻の提案で郊外の安アパートに引っ越すことになったハビエルはいよいよ精神的に追い込まれる。
暗く蛇口から水漏れするアパートで妻はパートに出るようになって車を売るように進めてくる。太って暗くいじめられっ子の息子。会社の面接でハビエルの価値をを否定してくる若造。
そんなとき車の中に前の家の鍵が落ちているのをみつけて思い出したように見に行ってみると元のハビエルの家には幸せそうな夫婦と娘が住んでいた。
ハビエルはその家族が留守の間に普通に鍵を使って侵入しては家族の事を調べたりする。
そしてそこの旦那であるトマスが何度も断酒に失敗しているとわかったハビエルはトマスが参加する依存症のグループセラピーを通じて接触を図る。
自分にふさわしい暮らしを取り戻すための第一手として。

これ題名がおかしいよね
住人がテーマじゃないしこれ

原題の「HOGAR」がHOMEって意味みたいだからそのままにすればしっくりきたんだけどね
アメリカ題の時点で「住人」になっちゃってるからそのまま邦題にしたんだろな

「その住人たちは」とかつけたやつ絶対ちゃんと映画観てない

邦題って最近はもう適当だからな
洋楽の題名なんかもカタカナにするだけだし
トレーラーだけみて二分でつけてるようなのが多い

昔の映画とか曲のタイトルはよく考えたなあって感心するものが多かったのにね

「明日に向かって撃て!」
とかすごいよな原題で全然そんなこと言ってないけどちゃんと映画を観たうえでつけてる感じがする

ピンク・フロイドのThe Dark Side of the Moonを狂気とかちゃんと仕事してる感じがしたもんだよね

プログレ時代の題名の和訳はちゃんと聞きこんだ上で仕事してるなって感じのが多かったな
ハビエルの目的は住人でも家でもない

ヘビがあくまでも独断と偏見で考察するとこの映画はホームに始まりホームに終わる。
表面的に言えば自分が住めなくなった家に新しくきた住人に嫉妬してなんとか大好きな家を取り戻そうとする男。
となるのかもしれないけど実はそうではない。
ハビエルは前の家に愛着どころか住人にも興味はない。それどころか自分の家族にも愛はない。ただ自分のホーム、ハウスではなくあくまでも “自分に相応しいホーム” を取り戻そうとしている。
自分に相応しいホームとは
- パートに逃げて男のステータスを手放せと言う妻ではない
- 太って運動ができなくいじめられっ子の子供ではない
- 暗く水がもれる郊外のアパートではない
- 自分の価値もわからない若造の下で働く自分ではない
- タクシーを使って移動する自分じゃない
ハビエルの理想は自分が手掛けたCMに詰まっている。それをパートナーと築き上げるのではなくそれそのものが理想であり目的なんだ。
だからそのためなら自分の家族など平気で切り捨てる事ができる。
自分に相応しいくらしの為なら。
たまたま前の家の鍵を持っててララが社長令嬢でトマスはそのコネで重役に収まり娘は陰気なデブじゃなくかわいくて新体操をやっている。トマスを片づければあとは自分に相応しい家族じゃないか。
話は早い。

しかしスペインもアメリカと同じでエリートは高級住宅に住んで高級車に乗って夜はジョギングするのかね

アメリカ映画と同じように男のプライドを気軽に手放せとか言ってたしなw

生活が厳しいからそういう手もあるかもしれないけどハビエルにとってステータスであってイチモツみたいなもんなんだからもうちょっと慎重に結論を出してほしい

わかるけどなんかもっと他の例えないのかよw

だいたいダニにジョギングさせて吐いて帰ったときも奥さんは偉そうに自分の息子の事は知ってるみたいに言ってたけど
いじめられてんのにブクブク太らせたままじゃ何も変わらないじゃないか

お父さんとお母さんどっちもどっちだけどなw
ハビエルも普段息子に興味ないくせに一度で痩せさせようぐらいの勢いだっただろw

そういえば引っ越す前にハビエルがダニと引っ越し先の学校の事で話をしたシーンで
ダニ「ただでさえ笑いものなのに通い続けたくない近くの公立に通うよ」
ハビエル「笑いもの?なぜだ」
ダニ「明らかだろわからない?」
って言ってたけど金持ちしかいない私立の学校でお父さんが失業してるのも筒抜けなのかな
それとも太っていじめられてるのをお父さんのせいにしてるだけなのかな

太ってるのをお父さんのせいってよりも
自分の子供なのに太っていじめられてる苦しみにも気づいてくれないの?
って事で責めてるんじゃないかな
でも確かに金持ちしかいない私立の学校だったら噂も早いかもわからんね
純文学として受け入れるとなかなかの名作になる

明るい家。帰宅するハビエルに駆け寄るモニカ。
モニカを抱き上げるハビエル。
ララととキスを交わすハビエル。
明るい食卓。
暗く女々しい男は失った自分のホームというプライドを取り戻すために淡々とコマを進めていく。
ストーリーは平凡で主人公の思惑通りに計画は進んでいく。特に意外性はなくこれといったピンチもない。
これがまさに純文学ですねはい。
純文学の主人公なんてみんな変態だし。
これをサスペンス的に観ると
気持ちの悪い主人公が何の罪もない家族を陥れるためになんの失敗もなく計画を進めて天罰も下らない胸糞の悪い映画。って事になるのかもしれない。
でもヘビは純文学を読むときみたいに俯瞰で観てたから全部受け入れることができたんだ。
ハビエルの行動が奇妙にも感じない。かと言って同情するわけでもない。そんなにひどい目に合ってほしくないし成功してほしくもない。
では何が面白いのかというとあまり語られない主人公の苦悩と考えを勝手に解釈する。これぞ純文学の楽しみかただよね。
まさにそのモードで観たんですよ。
かつての成功者が堕ちた所から物語は始まる。
かつての芥川賞作家が筆を折ったところから物語は始まる。みたいだよねよくあるねw
何度かでてくる車を売る広告を観た人からの電話がかかってくるシーンもすごく純文学っぽいんだ。
“ハビエルはおっくうなそぶりを見せることなく
「車はすでに売れました」
と返すのである。”
ハビエルは感情を表さないし行動の理由も特に語ることはないから映画を観終わってから色々と考えるとこも純文学を読み終わった後のように最高に面白いんだ。
蛇口からポタポタ
郊外の安アパートに引っ越したときに蛇口からポタポタと水が漏れている描写。
これを最後に回収してきてすごく洒落ていたね。
最初の安アパートのポタポタは
“生活レベルが落ちました”
という単なる演出として受け入れるわけだ。
だけど最後に今度は豪邸でハビエルが外を眺めていると後ろでポタポタしている。
実に洒落てますねえ。
サスペンス的に捉えるならば最初の安アパートのポタポタからハビエルは一線を超える行動を起こしたわけだから最後に豪邸でポタポタしてることによって、
ホームにまたほころびが生まれる前兆
の様にとらえることもできるよね。
さて今度はこれを純文学的に捉えてみよう。
“男は手に入れたものを確認するように巨大な新居の窓に立ち庭を見ていた。本物の自分に相応しい暮らしをついに手に入れたのだ。
男は聞き覚えのある音で振り返ると台所の蛇口から水がしたたり落ちていた。”
これは怖いですねえ。
最後の豪邸でのポタポタによって
本質が変わっていない。
という演出にもなるわけなんですねえ。
ハビエルが信じていたもの “自分に相応しい暮らし” これを取り戻すためにがむしゃらにやってきた。
何もかもを捨てて。
妻も息子もすてて殺人まで犯した。
ところが本質は安アパートから脱していない。おれは何も手に入れてないんじゃないか。
ここでハビエルは初めて気づき恐怖するわけだ。

最後のポタポタをホームが崩れ去る前兆とするなら会議室での前の奥さんの脅しにつながってくるかな

でもあそこでハビエルは完全に決着をつけた感じだったからな
変態庭師のトラの話でいうと奥さんが檻のトラでハビエルに手出しもできないって感じで

トラの話忘れてたw
そうかトラの話をここで再び拾ってきたのかもしれないね
あんなにわざわざ尺をとったシーンがあの後何もないわけがなかった

前の奥さんの脅しが生きてくる感じにするなら順番が逆じゃないかな
最後のポタポタのあとに奥さんがチラッと映るとか訪ねてくるとか
どっかに狼除けスプレーが置いてあるってのもいいかも

おもいきりサスペンスになるそれw
あくまでも個人の感想です。みんなはどう感じたかな?