ホラー・パニック

ミストのネタバレ感想と考察 衝撃のラストは悲惨な人と希望を見出す人類の対比

解説

2007年11月公開のSFホラー映画。原作は1980年スティーヴン・キングの小説「霧」。

監督は「ショーシャンクの空に」「グリーンマイル」などスティーヴン・キング小説の映画化に携わってきたフランク・ダラボン監督。

主演は「ディープ・ブルー」で頼れる男を演じたトーマス・ジェーン。「ディープ・ブルー」のとき同様 ”頼れる男” を演じる。

激しい嵐から始まり、スーパーマーケットに行く途中ですれちがう車両ごとに観る人を 徐々に 不安にさせ、舞台となるスーパーマーケットで軍人達が声を潜め話合う様が不安をさらに膨らませ、ダンの登場で一気に世界に引き込んで行く流れは実になめらかな導入である。

嵐の影響で電話が不通になり霧で視界が遮られ情報が遮断されたスーパーマーケットを舞台に人々の混乱と葛藤そして恐怖が描かれているが、そこはやはりキングの世界。極限状態で対立していく群衆の恐ろしさをうまく表現している。ミセス・カーモディの演説のシーンは霧よりもホラーなのではないだろうか。

良くも悪くも評価から外せないのは、当時賛同派と否定派で議論をを巻き起こし、キングは絶賛したという原作とは異なる衝撃のラストだろう。

あらすじ

激しい嵐の翌朝、デヴィッド一家が倒木に潰された家やボート小屋をながめていると、息子のビリーが湖上をゆっくりと迫り来る白い霧をみつける。

その後修理の材料や妻のステファニーに頼まれた買い出しのため、息子のビリーと隣人のノートンを連れてスーパーマーケットに着いたデヴィッドは、嵐に見舞われた住人でごった返すスーパーマーケットを目の当たりにし、被害の大きさを知る。

そこへ鼻血を流しながら助けを求めるダンが走りこんでくると同時に、あの白い霧がついにスーパーマーケットまでもすっぽりと覆ってしまう。ダンは霧の中に何かがいると言うのだ。

その直後大地震が起こり天井が落ち商品は散乱し人々は混乱状態へ。そんななかバックルームにてデヴィッドと数人の目の前で1人の従業員が霧の中の何かの犠牲となる。

デヴィッドは崩壊寸前の人々をリーダーシップを発揮し混乱を避けるため情報を制限しながらまとめようとするが、確かな情報が得られず身動きの取れなくなった人々の心は次第に対立を始める。

キャスト

デヴィッド・ドレイトン
(トーマス・ジェーン)
田舎町に住みながら映画のポスターを手掛ける画家。妻と8歳の息子ビリーの三人家族。

アマンダ・ダンフリー
(ローリー・ホールデン)
最近町にやってきた新任の女教師。生徒の子供たちに好かれている。スーパーマーケットでビリーの面倒をみてくれる。デヴィッドをみるまなざしが熱い。夫から護身用に銃を持たされている。

オリー・ウィークス
(トビー・ジョーンズ)
スーパーマーケットの副店長。射撃の腕は1994年メイン州チャンピオンになるほど。小さくさえない見た目だが実は終始冷静な判断を下しとても頼りになる。みんなが助かる為の最善の策と信じ導こうとするトーマスに共感し、協力する。薬剤にも通じている。

ミセス・カーモディ
(マーシャ・ゲイ・ハーデン)
熱狂的キリスト教信者の女性。これは神の試練です受け入れて祈れば救われるさあみなさんも。

ビリー・ドレイトン
(ネイサン・ギャンブル)
デヴィッドの8歳の息子。鼻血のおじさんからの大地震でショックを受け幼児退行してしまう。僕を怪物に殺させないでとデヴィッドに約束させる。

ブレント・ノートン
(アンドレ・ブラウアー)
ニューヨークで活躍する弁護士。デヴィッドの隣人でデヴィッドと家の境界線問題で何度ももめている。ノートンが訴訟を起こし裁判までしたがノートンの敗訴に終わりプライドをズタボロにされてさらに関係が悪化している。倒木で潰された愛車にトーマスが同情してくれたことで一時和解したものの、スーパーマーケットでトーマスの怪物話を信用できずからかわれていると思い込みまた関係が悪化する。彼もまた混乱のなか人々をまとめようと努力する。

カメレオンとヘビのネタバレ感想

導入と全体の素晴らしい構成

夜更けの大嵐によって停電に見舞われたデヴィッドは妻に頼まれた買い出しのため息子のビリーと隣人のノートンを車に乗せてスーパーマーケットへ向かう。被災者たちの買い物でごった返す停電したスーパーマーケットに鼻血を出したダンが霧の中に何かがいると言いながら逃げ込んでくる。朝みた霧がもうスーパーマーケットにも迫っていた。

カメレオン
カメレオン

この映画は衝撃のラストが衝撃だけにラストが話題になるけど、なんと言ってもテンポがいいね。最初の10分で大体の状況の説明と人々の関係性を説明して、そこから本編がスタート、鼻血おじさん、1人目の犠牲、狂信者のおばさん、と次々と展開していくんだ

ヘビ
ヘビ

最初の奥さんの「食料が痛みそう」ってセリフとスーパーマーケットの停電、それと車のラヂオが入らないシーンで町全体どころか州全体もしくはそれ以上の大規模停電かなと想像できるし、電力会社の車とすれ違ったと思ったら軍隊とすれ違うシーンやスーパーマーケットで町の人たちが買いだめしてるシーンで事態の深刻さもパッと推測できる。あと住民が大体みんな顔見知りって関係性から田舎でそんなに大きくない町が舞台ってこともサラリと入ってくるね。無駄なくテンポよく進行してく感じがした

カメレオン
カメレオン

そうそう。2時間以上あるのに長く感じさせないのはこのテンポの良さなんじゃないかな。デヴィッドとノートンの関係の説明を一気にしないで、話が進むにつれて完成していくとか、派閥ができていく様を映像だけでちらっとみせて大まかに説明しちゃうとかいいよね、なかなか全部の映画がこうじゃないからね。状況の説明を読書させるかのように時間かけてダラダラとやっちゃう映画はしんどいよね

ヘビ
ヘビ

うーんアレとかアレのことかな。逆にスタイリッシュにキメすぎて設定の説明ができなくてキングを怒らせた映画もあったねw

ミセス・カーモディ始動

スーパーマーケットで人々が混乱していくなか、狂信的なカーモディは神にツケを払うときがきた生贄を捧げるのだと演説を始める。はじめは “みんな知ってる変な人” だったが状況が悪化していくにつれて信者が増え自己陶酔してゆくカーモディは人々を扇動しついに生贄を捧げてしまう。

ヘビ
ヘビ

あー怖いあのおばさん。役者がうますぎてリアルな感じがしすぎるし、良い子のみんなは宗教家がみんなあんな人だと思わないように気をつけなきゃいけないね

カメレオン
カメレオン

カーモディ始動のトイレのお祈りからいきなり方舟的なこと言ってるし、もう最初から神の許しを得るためなら犠牲をだす覚悟っぽいよね。もちろん彼女にとってというか神の御意志の元に人類のためになんだろうけど

ヘビ
ヘビ

健康のためなら死んでもいいやつだねw ノートンが弁論みたいに群衆を諭してるとこにカーモディが「地獄で上告はできない。防御など無駄」とか言いながら大真面目な顔で商品のお菓子を勝手に食べるとこは変なギャグみたいで面白かったなあ。ローワン・アトキンソンの神父みたいにホスチアをビスケットのように食いだすんじゃないかと思ってw

カメレオン
カメレオン

緊急事態なんだろうけど神の子が神の教えを説きながら万引きすんのかよ!みたいな感じもあって面白いんだよね。でもあれアメリカのスーパーマーケットなんかは商品を食べながらレジに並んであとでお金を払うとか当たり前のとこもあるみたいだから、もしかしたら日本人からみるとギャグだけどただの大真面目なシーンかもわからんねw

カメレオン
カメレオン

発電機をどうしても直そうとするやつらのことをオリーが「固執してるんだよ異様な状況の中でこれは解決できそうな問題だからだ」って言うシーンがあったけど、これと同じようにカーモディが、何が起こってるかわからない何をしていいかわからない不安な群衆に、受け入れれば神の許しを得られる。生贄を捧げれば救われる。と断言する形でできそうなことを与えて信者を増やしていく描写は宗教へ皮肉のようだね。実際言ってることは抽象的なんだけど具体的な事を言ってるかのような印象になるんだよね

ヘビ
ヘビ

生贄はなにか矛先を与えてやるって意味では効果絶大だろうね。でも何か起こるごとにまた生贄が必要になっちゃうよね。でもまあ最初から一部の人間が助かるためにって考えだからいいのか。怪物にやられなければ最後の1人になるまで生贄を捧げ続けることになるんだろうかうーん

悲惨な人と希望を見出す人類

ここはもう安全ではないと判断したデヴィッドと一部の人たちは駐車場で犠牲者を出しながらもスーパーマーケットを脱出する。霧を抜ける事を期待し車を走らせるデヴィッドたちだったが絶望的な光景や恐竜ほどもある化け物との遭遇そしてガス欠。ついに覚悟を決めてしまう。車には5人、残りの弾丸は4発、、、

ヘビ
ヘビ

いやあいい意味で胸糞悪いねえ。最初のベリーショートのおばさんがまた、それみろだの感情を顔に出すことなく何思っているのか真顔で見つめてるところが余計も救いようのなさがあるねえ。デヴィッドは俺を殺してくれええ!!せめて罵ってくれええええ!!って思っただろうなあw

カメレオン
カメレオン

あれ最後にカメラが引いていって全体を写すことによって、一部ではこんなことがありましたが、人類は事態の収束に向かいつつあります。みたいで余計も相対的にデヴィッドの悲惨さを強調するんだよね。あと5分出発するのが遅かったらとかスーパーマーケットに留まっていたらとか責めて弾丸がもう一発あればとか。他にもっといい選択肢がなかったのかと思わせちゃうところが残酷だよねえ。事態が収束しつつありそうだからある意味人類という大きな枠では希望エンドなんだもんね

ヘビ
ヘビ

ミセスカーモディにヘッドショットをキメなかったらあるいは、、、、でもあれ大きいマトの胴体に一発いれて動きが止まったとこでヘッドショットをキメるんだからプロの仕事だねえ。しかも一発目は心臓だったねえお見事

カメレオン
カメレオン

スティーヴン・キングの原作だけあって、人それぞれのキャラがすごく憎たらしくも愛すべき感じになってるんだよね。だからこそ生き抜いて欲しかったデヴィッド達への仕打ちがすごくてラストの考察で盛り上がるんだろうね。最初のMPが「薬局を見てくる」とか、アローヘッド計画の事とか、細かい伏線もちゃんと回収してて関心するし無駄がない。まさにB級ホラーの傑作だね

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